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1)『イオンマイグレーションの簡易測定法』
Simple Measurement of Ion Migration

〜第6回 信頼性学会 信頼性シンポジウム にて発表〜

1.はじめに

 製品のコンパクト化に対応する配線パターンの微細化、狭ピッチ化又はフロン規制による無洗浄化により、フラックス及びハンダ材料の信頼性評価が急務になっている。特にフラックス残渣が原因で発生すると思われるイオンマイグレーションにおいては、現在まで適当な測定法がなかった。
 従来、高温高湿電圧印加試験における、クシ型基板による絶縁抵抗測定法があるが、複数の供試品に対して常時測定することができず、またマイグレーションを起こした結果の観察はできても、マイグレーション発生迄の時間及びマイグレーション発生に至るまでの過程については測定できなかった。

 本報告はマイグレーション発生迄の時間測定及び、マイグレーション発生に至る過程、マイグレーション発生後の様子についても、容易に測定できるシステムを開発したので報告する。

2.測定システムの基本構成

 本システムは図1のように、計測部と制御部で構成される。計測部は供試品への電圧印加及びクシ型導体間の絶縁抵抗測定を行う。

制御部は測定供試品数、マイグレーションの計測条件、測定時間等の設定及び計測データの蓄積を行う。
また、システム外観写真を図2に示す。

図1:システム構成図
■図1:システム構成図
図2:システム外観写真
■図2:システム外観写真

3.測定原理

 図3に示す複数のクシ型基板に対して、それぞれ計測部よりクシ型基板の導体間に電圧を印加し、その時の導体間の電流を計測する。計測されたそれぞれの電流は制御部にて絶縁抵抗に変換され、計測データとして蓄積又は表示される。また本システムの概略仕様を表1に示す。

図3:システムブロック図
■図3:システムブロック図

評価対象供試品 JIS クシ型基板、その他テスト基板
評価対象供試品 MAX 128ポイント
印加電圧範囲 1〜100V 可変
直流電流測定範囲 100pA〜320μA
絶縁抵抗測定範囲 1×1012Ω〜3.2KΩ
測定時間 MAX 999.9時間
測定周期 40ms/8ポイント(MAX640ms/128ポイント)
マイグレーション発生時検知速度 3ms以内/128ポイント
収録データ数 MAX149点/ポイント
マイグレーション時収録データ数 149点/域(MAX50域まで)
制御部(パソコン) PC98シリーズ HDD40M以上、GP-IBボード
■表1:システム概略仕様


4.マイグレーション評価準備

4.1 供試品のパラメータ

 供試品として表2のようなIPC規格に準拠した3種類の異なるパターンに対して、基板材質の異なるクシ型基板を準備した。また、導体処理として無洗浄系の液状フラックスを塗布後乾燥させた物と、液状フラックスではんだ付けした物を準備した。クシ型基板のパターン図を図4に示す。

Aパターン
供試品
Bパターン
供試品
Cパターン
供試品
導体幅 0.165mm 0.318mm 0.635mm
導体間隔 0.165mm 0.318mm 0.635mm
重ね代 15.75mm 15.75mm 15.75mm
■表2:基板のパターン
IPC TYPE-A
IPC TYPE-A
図4:クシ型基板パターン図

IPC TYPE-B
IPC TYPE-B
IPC TYPE-C
IPC TYPE-C

■図4:クシ型基板パターン図

4.2 評価条件

 イオンマイグレーションの発生変化要因としては図5に示すものが考えられるが、今回は環境条件、電極間隔、基板材質の3要因について評価を行った。表3に評価パラメータを示す。

(1) 環境条件
(2) 電圧印加条件
(3) 電極間隔
(4) 基板材質
(5) はんだ材質
(6) 表面処理の種類
(7) フラックスの種類
■図5:マイグレーションの発生要因

環境条件 85℃*85%RH
処理 材質 Aパターン供試品 Bパターン供試品 Cパターン供試品
フラックス乾燥のみ GE A-1 A-2 A-3
CGE A-4 A-5 A-6
フラックス+はんだ GE B-1 B-2 B-3
CGE B-4 B-5 B-6

環境条件 110℃*85%RH
処理 材質 Aパターン供試品 Bパターン供試品 Cパターン供試品
フラックス乾燥のみ GE C-1 C-2 C-3
CGE C-4 C-5 C-6
フラックス+はんだ GE D-1 D-2 D-3
CGE D-4 D-5 D-6

■表3:評価パラメータリスト

注1)表中のA-1〜D-6は供試品番号を示す。
注2)表中の材質、GEはガラス布基板+エポキシ樹脂、CGEはガラス布・ガラス不織布複合基板エポキシ樹脂


4.3 評価内容

1) 温度環境条件の違いによる導体間隔の絶縁抵抗値の経時変化及びマイグレーションの有無。
2) 基板材質の違いによる導体間隔の影響及びマイグレーションの有無。
3) はんだ付けの有無による導体間隔の影響及びマイグレーションの有無。


5.マイグレーション評価結果

5.1 温度環境条件による変化

 各供試品のマイグレーション発生までの時間を観察すると、図6より明らかに温度が高い程発生時間が短く、導体間隔が狭いほど発生しやすい事がわかる。また、時間とともに絶縁抵抗値が低下しマイグレーションに至るが、発生数は導体間隔が狭い程多く観測された。表4に各供試品の初回マイグレーション発生時間及び、その後のマイグレーション発生個数を示す。なお、本評価はマイグレーション発生の有無に関係なく、800時間で測定を打ち切った。

図6:環境条件による絶縁抵抗の経時変化
■図6:環境条件による絶縁抵抗の経時変化

環境条件 85℃*85%RH
処理 材質 Aパターン供試品 Bパターン供試品 Cパターン供試品
フラックス乾燥のみ GE 354時間/10個 発生なし 発生なし
CGE 530時間/1個 発生なし 発生なし
フラックス+はんだ GE 236時間/1個 発生なし 発生なし
CGE 451時間/1個 発生なし 発生なし

環境条件 110℃*85%RH
処理 材質 Aパターン供試品 Bパターン供試品 Cパターン供試品
フラックス乾燥のみ GE 203時間/50個 205時間/22個 220時間/10個
CGE 203時間/36個 209時間/8個 発生なし
フラックス+はんだ GE 151時間/29個 173時間/5個 200時間/1個
CGE 173時間/43個 195時間/10個 発生なし
■表4:マイグレーション発生時間及び発生個数
注1)発生時間は絶縁抵抗値が106以下でマイグレーション発生と定義した。


5.2 基板材質及びはんだ付けの有無による影響

 表4より基板材質の影響は、環境条件にかかわらず、GEの方がCGEより早くマイグレーションが観察され、導体間隔が狭い程、マイグレーション発生までの時間が短かった。はんだ付けの有無による影響は、いずれもはんだ付けした物の方がマイグレーションを起こしやすい結果となった。

 以上マイグレーションの発生過程を観察してみると、マイグレーションの発生はいずれも導体の+側から枝状の移行成長が起こり始め移行した銅が酸化還元を繰り返す。この時、絶縁抵抗値は急激に変動する。さらに移行が成長し、−側に到達後短絡状態となり、絶縁抵抗が著しく低下し焼損する。また、マイグレーションは焼損後再び成長焼損を繰り返す物もある。図7にマイグレーション発生時の写真を示す。写真の中央はマイグレーションを頻繁に繰り返した物で、−側で黒く焼きただれているのが観察できる。また、+側全体に枝状の銅の移行状況が観察できる。

図7:マイグレーション発生写真
■図7:マイグレーション発生写真

6.まとめ

 本システムによりマイグレーションに至る経過及びマイグレーション発生までの時間が明らかになった。また、マイグレーション発生変化要因についても、容易に傾向が測定できることがわかった。

今後さらに、はんだ材質、フラックス選定の評価等に、本システムを利用していく予定である。

<参考文献>
1)高萩、柳沢他:絶縁基板上の銅移行について(昭和59年度 電子通信学会総合全国大会)

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