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4)『熱衝撃試験におけるはんだ接続信頼性の一考察』

〜第35回 信頼性・保全性シンポジウムにて発表〜

1.はじめに

 鉛フリーはんだの接続部の熱疲労による信頼性評価は非常に重要ではあるが、試験時間がかかるという欠点がある。

 本報告は接続信頼性評価の試験時間短縮を目的として、液槽式の熱衝撃試験器を使い従来の気槽式の温度サイクル試験器との相関性について、試験温度範囲及び保持時間という観点から検討したので、以下に報告する。

2.評価内容

2.1 供試品

 試験に使用した供試品は0.6mmピッチCSPをFR4 基板に両面実装した。使用はんだは、はんだボールはんだペーストともにJEITA組成(Sn3Ag0.5Cu)を使用した。また、供試品の配線は電気的に接続したディジーチェーンとした。

2.2 試験装置及び測定方法

 液槽式熱衝撃試験器及び気槽式温度サイクル試験器の夫々の試験槽中に供試品をセット(図1、図2)し、CSPのはんだボール間の接続抵抗値を連続的に測定した。図3に測定機器の構成図を示す。

図1 液槽式試験槽の供試品設置状態

■図1 液槽式試験槽の供試品設置状態

図2 気槽式試験槽の供試品設置状態

■図2 気槽式試験槽の供試品設置状態

 なお、試験保持時間(高温又は低温に供試品がさらされた時間)は供試品温度が各試験温度に到達した時点からの時間とした。また、抵抗測定は夫々の供試品が各設定温度に到達した後、温度が安定する5分経過した後に測定した。不良判定は供試品の初期抵抗値を基準として、抵抗値が2倍になった時点の不良時間とし測定記録した。

図3 測定機器の構成図

■図3 測定機器の構成図

2.3 試験パラメータの検討

 CSPにおける実装信頼性の試験パラメータとして
(1)試験温度範囲(試験温度の差)と寿命の相関性
(2)保持時間と寿命の相関性
の2つの試験パラメータについて、液槽式熱衝撃試験器及び気槽式温度サイクル試験器を使い、表1に示す試験条件で試験で行い、夫々のパラメータに対する加速性を検討した。
 図4に、液槽式、気槽式の試験温度プロファイルを示す。

図4 試験温度プロファイル
■図4 試験温度プロファイル


試験温度範囲(試験温度の差)と寿命の相関性
試験温度範囲 温度差 保持時間
−25℃〜+125℃ 150deg 高温/低温各10分
−40℃〜+125℃ 165deg 高温/低温各10分
−55℃〜+125℃ 180deg 高温/低温各10分

保持時間と寿命の相関性
試験温度範囲 温度差 保持時間
−40℃〜+125℃ 165deg 高温/低温各10分
−40℃〜+125℃ 165deg 高温/低温各20分
−40℃〜+125℃ 165deg 高温/低温各30分

■表1 各試験パラメータにおける試験条件

2.4 試験ストレスの検討

 加速性に影響をおよぼすと考えられる、液槽式熱衝撃試験器及び気槽式温度サイクル試験器の各試験温度範囲における試験ストレスの影響を温度変化時間という視点で比較検討した結果(表2)、気槽式に比較し液槽式では約15倍厳しい試験となった。図5〜図7に各試験温度における液槽式/気槽式の温度変化の温度記録チャートを示す。

試験温度範囲 液槽式:a 気槽式:b 比較:a/b
−25℃〜+125℃ 12.1deg/s 0.8deg/s 15.1倍
−40℃〜+125℃ 9.2deg/s 0.6deg/s 15.3倍
−55℃〜+125℃ 7.6deg/s 0.5deg/s 15.2倍

■表2 液槽式/気槽式の試験ストレス比較

注)表中の温度変化時間は高温/低温変化時間の平均値


図5 液槽式/気槽式の温度変化時間
■図5 液槽式/気槽式の温度変化時間(−25℃〜+125℃)

図6 液槽式/気槽式の温度変化時間
■図6 液槽式/気槽式の温度変化時間(−40℃〜+125℃)

図7 液槽式/気槽式の温度変化時間
■図7 液槽式/気槽式の温度変化時間(−55℃〜+125℃)


3.評価結果

3.1 各試験パラメータのワイブル解析

(1) 試験温度範囲と寿命の相関性
 液槽式熱衝撃試験器を使用し、保持時間を10分に固定した状態で、低温側を−25℃、−40℃、−55℃と変化させた時の加速性を評価した。ワイブル解析結果を図8に示す。

 図から明らかなように−25℃と−40℃の間では傾き、MTTFともに顕著な差がみられなかった。これに対して−55℃では同じ傾きでMTTFに約1.5倍の加速性が得られた。

図8 液槽式熱衝撃試験ワイブル解析(1)
■図8 液槽式熱衝撃試験ワイブル解析(1)

(2) 保持時間と寿命の相関性
 液槽式熱衝撃試験器を使用し、はんだ実装寿命試験で標準的に用いられている、−40℃〜+125℃の温度範囲で保持時間を10分、20分、30分と変化させた場合の加速性への影響について評価した。
 ワイブル解析結果を図9に示す。解析結果から、保持時間10分と保持時間20分、30分で多少形状パラメータの値が異なるが、保持時間を変化させても殆ど差が認められなかった。
 なお何れの結果も累積故障率が50%付近で傾きに変化が見られる。特に保持時間10分のデータはその変化が大きく、違った故障メカニズムが混在していることが考えられる。
本件については故障解析にて故障メカニズムを明らかにした。

図9 液槽式熱衝撃試験ワイブル解析(2)

■図9 液槽式熱衝撃試験ワイブル解析(2)

3.2 液槽式と気槽式の加速性比較

 はんだ実装寿命試験で標準的に用いられている−40℃〜+125℃、各10分の条件で双方の比較試験を行いワイブル解析した結果を図10に示す。図から明らかなように両者の間には殆ど差の無い結果が得られた。
 以上の結果から液槽式、気槽式ともに試験温度差による故障モードは同一で、加速時間に変化が見られないことが判明した。

図10 液槽/気槽式比較試験のワイブル解析

■図10 液槽/気槽式比較試験のワイブル解析

4.故障解析結果

(1) 破断箇所の特定(非破壊解析)
 試験終了後、各はんだボールに対しX線CT装置を用いて破断状況について解析を行った。X線CT観察の結果、クラックの発生箇所が試験条件や接続箇所により異なっていることが非破壊で確認することができた。図11のように3D像で観察することによりクラックの大きさや進行方向が立体的に捉えることも可能である。

図11  X線CTによるはんだボール群の3D像

■図11 X線CTによるはんだボール群の3D像

(2) 破断箇所の特定(断面研磨)
 クラック発生状態を詳細に観察するため、断面研磨を行い、クラックの発生状態を解析した。


1.クラックの発生箇所
 試験条件によりクラックの発生箇所に差がないか分析するため、図12に示すように素子側接続部、基板側接続部及びはんだボール内の3箇所に層別した結果、クラックの殆どが素子側に発生していた。

図12 素子側接続部に発生したクラック例

■図12 素子側接続部に発生したクラック例

2.基板部のクラック
 断面観察の結果、図13に示すように基板面の電極端面から内部にクラックが進行しているものが検出された。クラックは、はんだ側にも進行しているが、何れが起点となるかは現在分析中であるが、基板強度が寿命に影響を与えることが判る。
 尚、今回図9のワイブル解析において保持時間20分、30分において本現象が確認された。

図13 基板クラックの発生事例

■図13 基板クラックの発生事例

3.クラック部の成分分析
 はんだクラックは、図14に示すように、はんだボールと素子の電極界面に成長した金属間化合物に沿って確認された。

図14 金属間化合物の生成

■図14 金属間化合物の生成


5.考察

1)

試験温度範囲と寿命の相関性
 試験温度範囲と寿命の相関性は認められる。−25℃と−40℃ではさほどMTTFに差がみられないが−55℃で多少の加速が得られた。

2)

保持時間と寿命の相関性
 保持時間と寿命の相関性は認められる。保持時間10分と保持時間20分、30分で多少形状パラメータの値が異なるが、保持時間によるMTTFの差はみられなかった。また、保持時間10分と保持時間20分、30分のデータではその変化が大きく、故障解析した結果、保持時間20分、30分でははんだクラック以外に基板クラックという故障因子が認められ、違った故障メカニズムが混在していることがわかった。

3)

液槽式と気槽式の加速性
 液槽式と気槽式とも同一試験温度範囲、同一保持時間では故障モードは同一ではあり、加速時間にも変化がみられない。しかし液槽式と気槽式とでは表3に示すように、同一試験条件において1cycleごとの温度変化時間に大きな差があり、液槽式は気槽式に比べ、サイクル時間が稼げるという優位性が確認できた。

試験温度範囲 液槽式 気槽式 加速係数
−25℃/+125℃(10分) 145sec 308sec 2.1倍
−40℃/+125℃(10分) 159sec 670sec 4.2倍
−55℃/+125℃(10分) 182sec 977sec 5.3倍
−40℃/+125℃(20分) 279sec 790sec 2.8倍
−55℃/+125℃(30分) 422sec 1217sec 2.9倍

■表3 液槽式/気槽式の温度変化時間の比較

注)上表の液槽/気槽式−は1cycle時の温度変化時間

6.まとめ

 これまで、液槽式熱衝撃試験器を用いた試験は、気槽式温度サイクル試験器に比較し、温度変化のカーブが急傾斜のため供試品に与えるストレスが大きく、結果として加速が可能となると考えられていた。
 しかしながら本信頼性試験結果及び故障解析結果からは、顕著な差は無いとの想定外の結果が得られた。更に保持時間を正確に設定すれば、10分間で問題ないこともデータにより裏付けられた。

 以上の結果から液槽式と気槽式の加速性はサイクルに要する時間差によるものであり、本試験器を用いた場合には、表3に示す試験時間の短縮ができ、結果として加速試験を可能にすることができる。今後、供試品の種類を変えた試験を積み重ね、データの信頼性を高めていきたい。
 終わりに、本試験の実施にあたり、供試品の提供、解析にご協力いただいた多くの関係者の方々に深く感謝の意を表したい。


<参考文献>
1)佐々木 喜七:RCJにおける実装評価試験の状況について
RCJ会報第31巻、第1号(2004)

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